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名古屋地方裁判所 平成元年(ワ)801号 判決

原告

中部交通共済協同組合

被告

フツトワークエクスプレス株式会社

主文

一  被告は、原告に対し、金九四万二七五二円及びこれに対する昭和六一年五月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一五二万一二五四円及びこれに対する昭和六一年五月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が左記一1の交通事故の発生を理由に、被告に対し民法七一五条により損害賠償請求をする事案である。

一  争いのない事実

1  交通事故

(一) 日時 昭和六一年五月一五日午前六時三〇分ころ

(二) 場所 神奈川県相模原市当麻二七六七番地先国道一二九号線上

(三) 当事車両 訴外金子飛機雄(以下「金子」という。)運転の大型貨物自動車(相模一一か九七四五。以下「金子車」という。)

訴外遠州産業運輸株式会社(以下「遠州産業」と言う。)所有・訴外内野浩義(以下「内野」という。)運転の普通貨物自動車(浜松一一き七九〇三。以下「内野車」という。)

(四) 態様 金子車が側道より国道一二九号線に進入した直後、追越車線を走行して来た内野車と衝突した。

2  責任原因

金子は、被告の従業員であつて、本件事故当時被告の業務を執行中であつた。

二  争点

1  被告は、本件事故は、内野の速度超過及び前方不注視の一方的な過失による追突事故であるとして金子の過失を争い、仮に金子の過失が認められるとしても、本件事故による損害額を争い、相当の過失相殺がなされるべきである旨主張する。

2  原告は、次のとおり被告に対する損害賠償請求権の取得を主張するところ、被告はこれを争う。

(一) 原告は、昭和六〇年六月一日、遠州産業との間において内野車の衝突、接触等によつて生ずる遠州産業の損害を原告が共済金を支払うことにより填補する内容の交通共済契約(以下「本件交通共済契約」という。)を締結した。

(二) 原告は、昭和六一年一〇月一七日、本件交通共済契約に基づき、遠州産業に対し、本件事故により同社に生じた損害について、免責金額五万円を控除した一五二万一二五四円の共済金を支払つた。

(三) 遠州産業は、右共済金の受領に伴い、原告に対し、遠州産業の被告に対する損害賠償請求権を譲渡し、被告に対し、平成元年六月二二日到達の書面により右債権譲渡の通知をなした。

第三争点に対する判断(原本の存在・成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)

一  本件事故態様

当事者に争いのない事実、甲第一二号証、証人内野浩義の証言により成立を認める甲第二〇号証、本件現場付近を撮影した写真であることは争いがなく、その余については証人金子飛機雄の証言により成立を認める乙第二号証の一ないし一〇、証人内野浩義及び同金子飛機雄の各証言(それぞれ後記措信しない部分を除く。)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場付近の状況は、別紙図面記載のとおりであり、南北に走る片側二車線、片側の幅員六・四メートルの国道一二九号線(以下「本件道路」という。)上であり、走行車線の左側には約一五〇メートルの合流区間が設置されている。

本件事故現場付近は、厚木方面から新昭和橋に差し掛かるまでは下り勾配、新昭和橋に差し掛かる地点から八王子方面は上り勾配となつているが、前後左右の見通しは良好である。

また、本件道路は、最高速度が時速五〇キロメートルに規制されている。

2  金子は、金子車を運転して本件道路の本線に合流するため、合流区間を時速三〇キロメートルないし四〇キロメートルで進行していたところ、本線の走行車線上を時速約五〇キロメートルで走行しているキヤリアカーを認めて、右キヤリアカーの後ろに入るように自車の速度を調整しながら走行車線に進入し、右キヤリアカーのすぐ後ろに合流した。この時の金子車の速度は時速約五〇キロメートルであつた。

ところで、金子は、キヤリアカーの速度が遅いために本線に合流する前から合流後追越車線に進路変更しようと考えていたため、右合流後、直ちに右方向指示器を出すとともに右サイドミラーで追越車線上の後方を確認したところ、内野車を認めたが、自車との距離が一五〇ないし二〇〇メートルあるように見えたため、さらに肉眼で確認することなく右方向指示器が三、四回点滅した後、追越車線への進入を開始した。ところが、進入を完了する前に追越車線上を後方から時速七〇キロメートルを超える速度で走行して来た内野車の前部と金子車の右側後部が衝突した。

右衝突の結果金子車に生じた損傷の程度は右後部角が最も大きく、また、右側サイドパネルには、内野車が積載して同車の前バンパーにワイヤーで固定していたクレーンによる擦り疵が生じた。

ところで、証人金子は、金子車が追越車線への車線変更を完了し、一〇〇メートル程度走行した後、内野車に追突された旨供述するが、右認定の金子車の損傷状況に照らし、右供述は到底措信しえない。

右供述と同旨の記載がなされた金子作成の甲第二〇号証も同様の理由で採用できない。

また、証人内野は、内野車は、時速約七〇キロメートルで走行していた、金子車が右方向指示器を出した時、金子車と内野車との車間距離は約一〇メートルであつた旨供述するが、右サイドミラーによつて内野車を確認していた金子車が車間距離が約一〇メートルしかなく、しかも金子車の速度が時速約五〇キロメートルであり、金子車の直前を走るキヤリアカーのために十分な加速もできないままに、時速約七〇キロメートルで走行する内野車の前に進入したとすることは不合理であり、証人内野の右供述は措信しえず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

二  以上の事実を前提にして、金子及び内野の過失の存否並びに過失割合について検討するに、一に認定の事実から本件事故は、金子の右後方安全確認義務違反により生じたものであることは明らかであるが、一方、内野にも速度違反及び金子車の右方向指示器による合図を認めながら直ちに減速措置をとらなかつた過失があることも否定できず、双方の過失を対比すると、本件事故についての内野と金子の過失割合は、内野四、金子六と認めるのが相当である。

三  損害額

車両修理代及びレツカー代(主張も同額) 一五七万一二五四円

甲第一六号証によれば、右金額を認めることができる。

四  過失相殺

前記一認定の内野の過失を考慮して四割の過失相殺をすべきであるから、遠州産業が被告に請求しうる車両修理代及びレツカー代についての損害額は九四万二七五二円(円未満切捨)である。

五  原告の損害賠償請求権取得

争点2の事実は、甲第二一号証、証人木本喜佳の証言により原本の存在・成立を認める甲第一三号証の一、二、第一四及び第一五号証並びに同証言により認めることができる。

六  結論

以上によれば、原告の請求は、九四万二七五二円及びこれに対する本件事故当日である昭和六一年五月一五日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 深見玲子)

別紙 〈省略〉

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